クラウドストレージとクラウドコンピューティング:活用ガイド
あらゆる企業がいま、自社のテクノロジー基盤に最適なソフトウェアやサービスを選定する必要性に迫られています。なかでも、クラウドコンピューティングとクラウドストレージは、多くの組織がDXを推進するうえで不可欠な要素です。これら2つの用語は混同されがちです。しかし、これらは互いに補完関係にある一方で、本質的には異なる二つの概念です。
組織にとって最適なソリューションを選択するためのガイドとして、クラウドストレージとクラウドコンピューティングについて、それぞれの定義から主要な相違点までを詳しく解説します。
主なポイント:
- クラウドストレージとクラウドコンピューティングの本質的な違いは、その役割にあります。ストレージがデータの保管場所として機能するのに対し、コンピューティングはデータ処理やアプリケーションの実行を担います。
- 両者に共通するメリットは、拡張性とコスト効率に優れ、業務プロセスの効率化を実現できる点です。組織の成長や市場の需要変動にも、クラウドならではの柔軟性で即座に対応可能です。
- Boxのインテリジェントコンテンツ管理は、クラウドストレージの枠を超え、コンピュート機能を統合したソリューションを提供します。セキュアなコラボレーションや外部ツールとのシームレスな連携、エンタープライズグレードのセキュリティにより、生産性を向上させます。
クラウドストレージとは?
クラウドストレージとは、ローカルデバイスや物理サーバーではなく、オンラインネットワークを介してデジタルデータを保存、アクセス、管理できるサービスをさします。クラウドベースのサーバーを利用することで、あらゆるデバイスからドキュメント、画像、動画などのファイルのアップロードやアクセスが可能な仮想的な空間を提供します。 多くの企業が重要なドキュメントの管理や従業員・関係者との共有にクラウドストレージソリューションを活用しています。クラウドは、ビジネスにおけるコンテンツ管理の複雑さを軽減する解決策となっています。Boxが協賛したIDCのホワイトペーパーによると、組織の39%が、データやドキュメントの検索の難しさを、業務効率を阻害する最大要因の1つとして挙げています。
エンタープライズ向けクラウドドキュメントストレージに関するガイドも是非ご参照ください。
クラウドコンピューティングとは?
クラウドコンピューティングとは、リモートサーバーを介して提供されるストレージ、処理能力、ソフトウェアなどのコンピュートサービスを利用することを意味します。物理的なハードウェアに依存せずに、リソースへのアクセスと管理を可能にします。インターネット経由でコンピュート能力とリソースをレンタルするようなイメージです。自社のコンピュータのハードウェアやソフトウェアだけに依存する代わりに、サードパーティのプロバイダが管理するリモートサーバーからサービスにアクセスします。
多くの企業が、特定の業務プロセスを遂行する目的で、サードパーティのクラウドコンピューティングサービスを利用しています。これらのサービスは、一般的に従量課金制(PAYG)の料金モデルを採用しており、サブスクリプション料金には、サーバー、アプリケーション、データベース、ストレージなどの主要なインフラの使用量が全て含まれています。
クラウドコンピューティングとクラウドストレージの相違点
クラウドストレージがデータ管理を担うのに対し、クラウドコンピューティングは演算処理を担います。クラウドストレージがデータの保持に特化している一方で、クラウドコンピューティングは、そのデータを活用して、情報の分析、レポートの生成、デジタルワークフローの自動化などのアクションを可能にします。
ビジネスに最適なソリューションを選択するには、クラウドストレージとクラウドコンピューティングの違いを正しく理解しておくことが重要です。両者には主に次のような違いがあります。
項目 | クラウドコンピューティングとストレージの相違点 |
用途 | 多くのクラウドコンピューティングプログラムは、ビジネス向けに設計されています。一方、クラウドストレージは、ビジネス用途と個人用途の両方において等しく利便性を発揮します。 |
価値 | クラウドコンピューティングは、利用を通じてサーバーの処理能力を引き出すアクティブなサービスです。対して、クラウドストレージは、パッシブなサービスであり、最適なクラウドストレージ容量のプランを選択し、データを保存するだけでその機能を享受できます。 |
システム要件 | コンピューティングは、ストレージに比べてきわめて高い処理能力を要求します。コンピューティングソリューションは、一般的にWebベースで提供されるため、追加のソフトウェアのダウンロードが必要になることもあるクラウドストレージと比較して、ハードドライブの容量負荷を最小限に抑えられます。 |
相互依存性 | クラウドコンピューティングとストレージは相互に連携します。ストレージはデータ処理をコンピューティングに依存し、コンピューティングは処理対象となるデータのアクセス、保持、管理をストレージに依存します。 |
主な機能 | ストレージソリューションは、一般的にデータのバックアップ、暗号化、容易な共有などの機能を提供します。一方で、コンピューティングは、オンデマンドでの処理能力、アプリケーションのホスティング、リアルタイムのデータ処理を担います。 |
クラウドコンピューティングとデータストレージの類似点
クラウドストレージとクラウドコンピューティングは、場所を問わずアクセス可能な外部サーバーを利用するという点で共通しています。クラウドインフラの活用により、物理サーバーの保有や管理という負担から解放され、ビジネスの基幹業務の遂行に専念できるようになります。これこそが、クラウドがきわめてコスト効率が高く効率的である理由です。
また、優れた拡張性も共通する大きな利点です。クラウドサービスプロバイダの多くが段階的なサブスクリプション料金モデルを提供し、ニーズに最適なサービスプランの選択を可能にしています。企業の成長に伴ってストレージ容量や処理能力の拡張が必要になった場合でも、次の料金ティアにアップグレードするだけで対応できます。このプロセスはインターネット経由で行われるため、わずか数分で新しいプランの利用を開始できます。
クラウド導入のプロセスについてはこちらのページで詳しく解説しています。
クラウドストレージのユースケース
クラウドストレージには、ビジネス用と個人用の両方の用途があります。
ユースケース | 具体例 |
Webサイトホスティング | Webサイトホスティングサービスは、あらゆるメディア、投稿、その他のサイトデータをクラウドデータベースに保存します。これにより、チームでの共同編集がスムーズになるだけでなく、ユーザーがサイトにアクセスしたときにも、常に最新のコンテンツを即座に提供できるようになります。 |
クラウドストレージを使用してドキュメントを保存し、従業員やビジネスパートナーなどの共同作業者と共有します。適切な認証情報を持ち、リンク共有のベストプラクティスに従うことで、権限が付与されているユーザーは、世界中のどこからでもオンラインでセキュアにファイルにアクセスし、ダウンロードすることができます。 | |
仮想デスクトップホスティング | 仮想デスクトップインフラ(VDI)は、多くの拠点に分散した従業員を抱える企業や、BYOD(個人端末の業務利用)を導入している企業にとって、ビジネスデータのセキュリティを強化する有効な手段となります。ユーザーのデスクトップ情報を全てクラウド上の仮想マシン(VM)に保存することで、サーバーの保守負担の軽減と、運用コストの削減を可能にします。 |
業務に不可欠なデータのコピーをクラウド上に作成し、保存することができます。これにより、停電や自然災害、その他の予期せぬ緊急事態により業務が停止した場合でも、迅速な復旧が可能になります。多くのクラウドバックアップソリューションはプロセスが自動化されており、必要なときに常に最新のデータを利用できる状態に保たれます。 |
中小企業向けクラウドバックアップに関する解説も是非ご参照ください。将来の成長を見据えた最適なデータ保護を提案しています。
クラウドコンピューティングのユースケース
クラウドストレージと同様に、クラウドコンピューティングの応用範囲は事実上無限です。一般的なクラウドコンピューティングの例を以下に示します。
ユースケース | 具体例 |
クラウドベースの通信プラットフォーム | GmailやMicrosoft Outlookなどのメールサービスを利用するとき、メッセージや添付ファイルは、受信トレイに届く前にクラウド上に保存されます。SlackやWhatsAppなどのメッセージングプラットフォームも、クラウドを利用して会話やメディアを保存しています。これにより、ユーザーはアプリケーションを通じて、過去のメッセージやファイルにアクセスできます。 |
サービスとしてのソフトウェア(SaaS) | eコマース、ビデオ会議などのSaaSアプリケーションの多くは、利便性を高めるためにデスクトップ版やモバイル版を提供しています。しかし、基本的にはWebブラウザ上のポータルサイトだけでタスクを完結させることができます。 また、多くのクラウドコンピューティングサービスは、他のプラットフォームとのアプリケーション連携機能も備えています。これにより、操作が効率化し、生産性が向上します。 |
リモートデータ分析 | クラウドベースの分析アプリケーションを活用することで、オフィスの外からでもデータ分析を行えるようになります。多くのクラウドコンピューティングソリューションは使いやすいインターフェースを備えており、詳細なレポートの作成やデータの可視化も容易です。作成した分析結果は、関係者と共有することができます。 |
Webサイトのコンテンツ | ユーザーがあなたのWebサイトを訪問してコンテンツを利用するとき、そのインタラクションを支えているのがクラウドコンピューティングです。クラウドストレージがWebサイト上の大容量ファイルの保持を担う一方で、そのコンテンツを利用可能にするには、コンピューティングによる処理能力が必要です。 例えば、動画のストリーミングサイトでは、全ての動画コンテンツがクラウドに保存されています。しかし、ユーザーが動画をクリックしたときにバックグラウンドでデータにアクセスして再生する処理は、クラウドコンピューティングが担当しています。 |
ビジネス管理プラットフォーム | 大規模な組織向けにデータの一元管理を可能にする強力なツールを提供します。これにより、関係者は必要な情報に素早くアクセスし、データに基づいた迅速かつ効率的な経営判断を下すための基盤が整います。 代表的な例としては、顧客管理システム(CMS)、企業資源計画(ERP)ソフトウェア、インテリジェントコンテンツ管理プラットフォームなどが挙げられます。 |
クラウドストレージのメリット
Pluralsightのレポート「State of the Cloud(クラウドの現状)」によると、94%の組織が既にクラウドを利用しており、企業による新しいクラウドサービスの採用が急速に進んでいることが示されています。クラウドストレージは、あらゆる規模のビジネスに貢献し、特に膨大なデータを作成・管理する企業においてその真価を発揮します。
クラウドストレージのメリットを以下に詳しく説明します。
災害時のデータ保護
停電や災害はデータの消失や破損を招き、ダウンタイムや多額の損失を引き起こすおそれがあります。クラウドにファイルを保存し、バックアップを運用することで、データの冗長性が確保されます。万が一、オリジナルが失われても、予備のコピーから確実に復元ができるため安心です。クラウドはアクセスが高速で、バックアップからのデータの復旧プロセスも容易なため、あらゆる災害復旧(ディザスタリカバリ)計画の遂行を大幅に効率化します。
データセキュリティの強化
クラウドストレージのプロバイダは、ファイル暗号化、ゼロトラストアーキテクチャ、インテリジェントな脅威検知などの強力なサイバーセキュリティ対策を提供し、悪意のある攻撃者による情報窃取を防止します。たとえ攻撃者が第一防衛線を突破したとしても、多要素認証(MFA)や パスワード保護などの制御機能により、データはセキュアに保護されます。クラウドセキュリティの脅威状況を適切に把握するためには、各プロバイダが提供する機能を認識しておくことが重要です。
柔軟なストレージ容量
クラウドストレージサービスの主な目的は、自社のサーバーや個々のデバイスが提供できる限界を超えて、容量の拡張を実現することです。これにより、社内のドライブの容量の確保が可能になり、安心してコンテンツの作成や編集に取り組むことができます。クラウドストレージは拡張性が高く、ニーズに応じたストレージプランを選択できます。また、使用する分だけ料金を支払うプランも提供されています。
運用コストの削減
従来型のデータセンターでも必要な機能は果たせます。しかし、運用管理に多大なコストを要します。クラウドストレージを利用することで、ビジネスの特定のニーズに応じた柔軟なソリューションにより、データ関連コストの最適化が可能になります。自社でインフラを保持する必要がなくなるため、設備のアップグレードや冷却コスト、ITの人件費などの継続的なコストを削減できます。
クラウドコンピューティングのメリット
Fortune Business Insightsの予測によれば、クラウドコンピューティング市場規模は、2024年の6,762億9,000万ドルから、2032年には2兆2,900億ドルへと急拡大し、2024年から2030年までの年平均成長率(CAGR)は16.5%に達する見込みです。クラウドベースのツールは、より的確な意思決定を支援し、生産性と効率性を向上させます。
次に、クラウドコンピューティングの主なメリットについて説明します。
コラボレーションの円滑化
クラウドコンピューティングツールは、異なるデバイスや拠点間でのドキュメント共有やアクセスに伴う問題など、従来のコンピューティング手法で一般的だったコミュニケーションやコラボレーションの障壁を取り除きます。
これらのソリューションにより、複数のユーザーが同時に1つのファイルを編集できるようになります。また、ファイルの整合性を維持しながら複数のバージョンを管理する、ドキュメントのバージョン管理機能も提供されます。
リモートワークの簡素化
クラウドコンピューティングは、リモートワークを実現するうえで不可欠なテクノロジーです。リモートワークでは、場所を問わず業務ファイルにアクセスできる環境が必要です。クラウドコンピューティングサービスを通じてデータを一元管理することで、従業員はどこからでもファイルの閲覧や編集が可能になります。クラウド同期ソリューションによってドキュメントは常に最新の状態に保たれるため、場所を選ばないリアルタイムな業務の遂行が実現します。
コンテンツとアプリ管理の効率化
ファイルが整理されずに散在している状態では、業務を迅速に進めることは困難です。クラウドコンピューティングサービスは、あらゆるデータを一元管理することで、コンテンツやアプリケーションの管理を容易にします。さらに、多くのサービスには人工知能(AI)や機械学習(ML)などの高度な機能が組み込まれており、関連データを適切に連携させることで必要な情報の検索を大幅に効率化します。
エンタープライズAI戦略を検討中の組織に参考にしていただけるよう、主要なポイントについて以下に解説します。
クラウドコンピューティングとクラウドストレージ、どちらを選択する?
クラウドコンピューティングとクラウドストレージは、演算処理とデータ管理という異なる側面から、互いに補完し合う不可欠な存在です。クラウドストレージがデータを使用時まで保管する場所を提供するのに対し、クラウドコンピューティングは、データへのアクセスと活用を可能にします。
もし単にファイルやバックアップを保存するための追加スペースが必要なだけなら、クラウドストレージサービスが最適な選択肢となります。また、従業員の多くがリモートワークを実施している場合も、クラウドストレージを検討するとよいでしょう。 クラウドにデータを置くことで、オフィス勤務か在宅勤務かを問わず、全従業員がいつでもデータを利用・アクセスできるようになります。
より包括的なソリューションを必要とする企業は、多くの場合に、クラウドコンピューティングサービスが最適な選択肢となります。例えば、デジタルアセットライブラリ(DAL)ソフトウェアは、クラウドコンピューティングを活用してアセットのリアルタイム管理、使用状況の追跡、更新の自動化を実現します。これらはアセット管理の効率化とワークフローの最適化に不可欠なプロセスです。権限を付与されたユーザーは、一元化されたデータベースへのアクセスが可能で、組織全体での高い可視性とコントロールを実現できます。
クラウドサービスプロバイダの多くはどちらか一方に特化しているため、プロバイダを選択する前に自社のニーズに最適なソリューションを見極めることが重要です。
クラウドストレージソリューションが適している例: | クラウドコンピューティングソリューションが適している例: |
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デジタルアセット管理とは何か、どのようなメリットをもたらすかについては、こちらのページで詳しく解説しています。
Boxでクラウドコンピューティングとストレージを融合
Boxは、ファイルの作成から、共有、分類、保存に至るまで、コンテンツのライフサイクル全体を管理できる包括的なプラットフォームを提供します。また、業界をリードするインテリジェントコンテンツ管理プラットフォームとして、組織の枠を超えたチーム、クライアント、パートナーとの円滑なコンテンツコラボレーションを強力に支援します。
プラットフォームに統合されたエンタープライズグレードのセキュリティとコンプライアンスにより、コンテンツが完全に保護されているという安心感が得られます。Boxと統合可能なアプリケーションは1,500以上。現行のアプリケーションとシームレスに連携する統合されたコンテンツレイヤーとして、さまざまなニーズに対応し、柔軟な働き方を支援します。
Boxのインテリジェントコンテンツ管理は、ワークフローを最適化し、組織全体の生産性を向上させます。
クラウドストレージとクラウドコンピューティングのどちらか一方を選択する必要はありません。Boxを導入することで、両方のメリットを最大限に活用できます。ご相談・お問い合わせをお待ちしています。
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